手合わせ表現に着目した共創表現の計測と支援

手合わせ表現計測装置の開発

 インクルーシブダンス等の,他者と身体を直接触れ合わせて行う即興的な身体表現活動において,双方の関係が深化するにつれ,身心が同調し,互いの間に「包まれつつ,包む.包みつつ,包まれる」といった自他非分離的なつながりが生まれることがあります.このときの感覚を「共振」といい,他者と手のひら同士を直接触れ合わせ,即興的に身体表現を創りあう「手合わせ」では,手を前後に動かす際の力のやりとりを介して共振が発現することがあります.
 この研究では,「手合わせ」中の双方の力のやりとりにおいてダイナミックに変化していると考えられている,受動性・能動性の計測を考えました.これらを客観的に捉えるため,手のひらにかかる反力や身体の動きといった,力のやりとりを計測して,そのデータから共振感覚のダイナミクスを解析することを考えます. 実際の手合わせは3次元空間を自由に動き回り、計測が複雑化します.そこで図のように,手のひらの動きを1方向に限定することで,装置および計測の簡略化を考えました.写真の装置では,1自由度のリニアレールガイド上を移動する板に手のひらをバンドで固定し,自由に押し引きできるようにしました.その際,板にかかる力を力センサ,レニアレールガイド上の板の位置を位置センサにより計測しています. さらに,表現動作中の身体情報として,表現者の座面に荷重系を設置し,床反力中心を計測することを行いました.これらの装置で手合わせ表現を行った結果,共振が発現した施行では手のひらの動作に対して身体の床反力中心の動きが先行し,その両者の先行割合が多くなる,といったことがわかりました.このことから,開発した装置によって手合わせ表現において,表現を共に創りあう際に起こる身体に特徴的な動作を捉えられるのではないかと考えられます.






手合わせ表現の遠隔支援装置の開発

 IT技術が私たちの生活空間に入り込んで久しくなった今,例えば携帯電話やPCなどのように,ボタン操作,ON/OFF操作主体のインタフェースが主流となっています.このようなインタフェースにより,情報を記号化し,ダイレクトに相手に伝えることができるようになった一方で,相手の状況に合わせて「間合いを取る」,「気持ちを込める」ことが困難となり,すれ違いや誤解から生まれるトラブルも起こりやすくなっています.
 そこでこの研究では,手合わせ表現といった即興的な身体表現動作に着目しました.身体を動かして相手と深いつながりを得るプロセスを,遠隔地感において可能にすることでで,上記の問題にアプローチしてきました.本テーマでは,下記の研究を通じて上記の問題を解決するインタフェースの設計手法の構築やその評価手法に関する基礎的な研究を行っています.
 まず,遠隔地間でどのような情報を送りあえば共振のような深いつながりを得られるのか,という点について調べることを考えます.手合わせ表現では,表現を創る身体においては,ほとんど意識に上ることのない身体全体の動作が手のひらの動作に先行して生じる,ということが分かっています.そこで,手を合わせているかのような状態を遠隔で再現して,さらに身体全体の動作情報を相手に送りあうシステムを開発することを考えました.
  実際に作成した装置が以下の写真のようになります.リニアガイドレール上を移動するグリップをワイヤーでつないだモーターにより制御します.この時にグリップの情報は力センサや位置センサによって取得しています.これらの情報をもう一台の装置に送ることによって,離れたグリップの位置と力を合わせることに成功しました.また,身体全体の動作情報として,荷重計によって床反力中心を計測しています.
 これらの装置を用いて遠隔地間での手合わせ表現を行ったところ,対面の状態と比較してやりにくい,という意見が得られました.そこで相手との潜在的なつながりを得るために,計測した床反力中心から得た身体情報を,自分と相手のグリップに付加することを行いました.その結果,相手の身体を感じることができるようなコメントが得られました.このことから,身体情報を相手と自分の両方に呈示することで,遠隔において相手と深いつながりを得られるのではないかと考えられ,このようなシステムを組み込むことで,コミュニケーションを円滑化することができないか,計測を行っています.





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小型デバイスによる手合わせ表現の遠隔支援

 離れた場所にいる人々の間で共創表現を実現することを目指し,本研究では,身体全体が伴う表現動作を,手のひらの動作を介して二者間で伝えあう小型のデバイスを開発した.



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指合わせ表現に着目した創出的インタフェースの開発

 1本の指を介した即興的な身体表現手法(以下指合わせ表現)においても,手合わせ表現と同様に他 者と深いつながりが生まれることが確認されている.指 合わせ表現のような小さな動作によるインタラクション において,遠隔地間での共創表現の創出を支援すること ができれば,モバイルデバイスを介した共創表現がいつ でもどこでも可能になることが期待される.そこで本研 究では,指合わせ表現を遠隔地において支援する手法を 検討し,これを実現するシステムを開発した.